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結婚相談所の扉を開くのは

何人にも、相談所からの紹介で逢ったのだそうです。

それぞれ結婚に対して真剣ですから全てを正直に話してくれるその中で、次また会いたい人か否かをお互いが決めていく。

「オレが結婚相談所に登録してよかったと思ったのは、了見ってのかな、これが広がったってことたい。」と彼は言いました。

「こういう狭い村での生活をしとると、どんどん了見も狭くなる。

それが一度外の世間に眼を向けるとグッと運が開けるというか、いろんな可能性が広がってくるとたい。」

彼の幸せそうな顔を見て本当によかったなと感じると同時に「このオレは。。」と寂しくもなりました。

それからはなんということもない話をし帰るといった彼を見送りに出た玄関先で「今度、婚約者に会ってくれ。」そう彼が言いました。

「結婚式の案内も届くとは思うが、その前にな、3人で飲もうや。そげん期待すんな。美人じゃなかぞ。(そんなに期待するな、美人じゃないぞ)」

そう朗らかに笑いながら「これね、オマエも見てみらんや?(見てみないか?)」と言って、大きめの封筒を私に渡しました。

それを受け取り彼が帰った後に中を覗くと、彼が登録したという結婚相談所なのでしょう、パンフレットが入っていました。

玄関に飾っている両親の結婚式の写真を見上げました。

白黒の写真の中で、若い両親は笑っています。

親父の顔に自分の顔をすり替えて想像してみました。

おふくろの顔には誰も乗せ換えることが出来ず、ぼんやりとしたままの想像です。

「オレも登録してみようか。」

そうつぶやいていました。

不安もあります。

しかし膨らんでいく希望を、心が確認しています。

こんなオレでも、誰かが出会いを待っていてくれているのだろうか。

パンフレットに真剣に目を通そう、そう思い封筒になおしました。

襖が開いて、廊下に母が出てきました。

「ショウちゃんは帰ったとね?何しに来たとや?(ショウちゃんは帰ったのか?何しに来たのか?)」

母はすっかり折れ曲がった腰を少し伸ばすような仕草をして、トイレの方へ歩いて行きました。

その背中が随分と小さくなったことに愕然とし「早く安心させてあげよう」そう心に決めました。

次の日、私は結婚相談所に電話をかけました。

こんな思い切ったことをするのはもう随分無いことだったなと、ちょっと笑えてしまいました。

自分にとっては「大いなる挑戦!」

でもこの決断が「新しい扉を開くこと」のような気がしています。